CerveloのシートポストSP15については別記事で既に触れているが、現行Sシリーズで互換性があるからか見に来られる方が多く、更なる情報ニーズが有ると見られることから、ここではカット・組み付けに使用した工具やケミカルについて取り上げる。よって、他のカーボンパーツ組み付けにも参考になる要素があると思う。
Cervelo Sp15 Carbon Seat Postの形状おさらい
まずは改めて断面形状画像から。 上の写真では、断面部がわかりやすくなる様に、わざと白っぽくしているが、全体的にエアロといえばこの形状というような翼面形の造形で、割りと厚みをもたせているのが判るのと、前後端近辺は強度確保の為に更に厚くしているのも確認できると思う。 画面左側の内径が太くなっている方が前側で、別記事で紹介したクランプが曲面状に抑えるのもこの部分となる。 一方、右側の後端部分については意外と尖ってはいないが、フレームに固定された際に後・下方向への荷重がかかる支点となることを考えれば、台形かつ厚みを増やしていることにも納得がいく。 また、これだけ形状が複雑だと、丸パイプ形状のものと比較して、適切な工具無しでのカットは非常に困難そうであることも改めて伺える。
エアロパーツ切断の良工具
そこで用いるのが、上の写真でSP15の周りを囲んでいる、切断作業用のソーガイドと呼ばれる工具で、SP15の様なエアロ形状にも対応しているものとそうでないものが存在する中、自身が利用しているのはParktoolのOversized Adjustable Saw Guide SG-7.2。
全体像はこんな感じで、基本的な使用方法としては、写真右側の平たくなった「くちばし」部分をバイス等で挟んでガイド自体を固定し、シートポストやフォークコラム、ハンドルバー等をガイド内を通した上で、写真左上に見えるハンドルを回転させて固定、上面に見えるスリット部よりノコギリを通してカットしていく。 なお、ISP型のフレームにおけるシートマスト等の場合は、流石にバイス固定が困難であると思われる為、フレーム側をメンテナンススタンド等に固定して作業をする必要がある。
横サイドからの全体像はこんな感じ。
内部での固定については、上の写真の様に切断対象の形状を問わず、実質的に4箇所の接触にて固定が行える様になっており、丸パイプは言うに及ばず、SP15の様な縦横比に差のあるものでもがっしりと固定できるようになっている。 また、製品名のOversizedが示す通り、丸パイプ形状なら直径27mm(1-1/16″)から45mm(1-3/4″)まで、SP15の様なエアロ形状の場合には長さ方向に対して最大70mm(2.75″)までの固定に対応することから、切断の選択肢がある殆どの自転車パーツに対応できると思う。
固定ができたらカットを行うわけだが、SG-7.2にはスリットが2つあることに気がついたかと思う。 この内、細い方が一般的な金属用鋸刃を使う場合のもので、太いほうがカーボン用鋸刃の為のものなのだが、何故スリットの太さが違うのかというと、通す鋸刃に秘密がある。
カーボンパーツ専用刃の絶大なる効果
ParktoolのハクソーであるSAW-1のオプション品、カーボン切断用鋸刃であるCSB-1のブレード部分を拡大したものであるが、一般的に抱く鋸刃のイメージとしてのギザギザ歯とは全く違う成り立ちになっているのが判ると思う。 雰囲気的には揚げ物に使うパン粉か、お菓子のトッピングのチョコスプレーの小さい奴の様な、顆粒状の粒が沢山付いているのが見て取れると思う。画像をクリックして頂ければ、より拡大した画像で見ていただけると思う。
SAW-1に元々付属している、スタンダードな金属用鋸刃との比較。CSB-1はこのツブツブ分だけ歯が厚くなるので、SG-7.2ではガタが出ない様、それぞれに見合ったスリット幅を用意しているというのが秘密に対する答えであるとともに、つまりはSG-7.2とSAW-1+CSB-1というのは、組み合わせて使用することを前提にした設計であるということも言える。
と言え、ノコギリに対するパブリックイメージが強すぎると、こんなので切れるのかと思うのだが然にあらず。 自身は力自慢ではないどころか寧ろ非力の方だが、中途半端な力でノコを引くときによくある引っ掛かりや負荷も少なく、呆気無いほどあっという間に切れる。 実際SP15のカットについても、様子見ながらでも2〜3分程で終了し、アルミ素材に金属鋸刃の組み合わせの方がはるかに時間がかかるほど。 また併せて特筆すべきは切断面の綺麗さと切断粉の少なさで、屋外作業ではあったものの、無駄に飛散することもなく、ヤスリでの切断面仕上げや後片付けも大変楽であった。 この辺りNet上でのDIY体験談では、カーボン用鋸刃ではないもので作業を行い、エライこと大変な思いをしている事例をよく見るが、この鋸刃にするだけで全然世界が変わると思う程オススメ度は高い。
I Need More GRIIIIIIIIIP!
さて、そんなこんなでカットが無事出来たら、次はフレームへの組み付けとなるのだが、締付けトルクをかけづらいカーボンパーツと切っても切れないのが摩擦増強剤としての役割を持ったコンパウンド系ケミカルの存在。 多分一番ポピュラーなのがFinishlineのFiber Gripで、次点でTacxのCarbon Assembly Compoundかと思うが、ウチではこれを使っている。
ややマイナーだが、日本国内ではどちらかと言うと2輪モータースポーツ界隈で知られている、スイスのMotorex社製のCarbon Grease。 自身のは数年以上前に購入した在庫分で、現在は名称変更されてCarbon Pasteとなっておりパッケージも少し違うが、基本的には同じものであると思う。 Motorex社の自転車向け製品群の日本国内代理店は服部産業で、Web上には特に詳細な商品情報等はないが、一応URLを以下に記す。
http://www.hattori-sports.com/motorex/
ケミカル的な特徴としては、どの製品もジェルっぽい感じになっている点は共通だが、前述の2製品が、ジェルに粒子を配合することで摩擦力を増強させようとするのに対して、こいつは接触面にかかる圧力が高くなると、ジェル自体の摩擦力が増えるという特性を持っている点が違う。
見た感じはFiber Gripと同様の透明ジェルだが、摩擦力増強用の粒子が配合された製品を使用することによって発生しやすくなる、カーボンパーツ表面に傷が付く現象を防ぐことが出来る様になっている。
光沢クリア仕上げとなっているSP15表面に塗った感じは上の写真のとおり。実際にはニトリルゴム手袋等を嵌めた指先でより薄く伸ばすようにする。 これはこの製品で特徴で述べた、接触面の圧力が増えることで摩擦力を増強する仕組みを活かす為にやるべきことである。
DIY血中濃度の高いヒト必携の多彩な使いドコロ
一般にこうしたカーボンパーツ用ケミカルは、シートポストネタが最も利用例として多いと思うが、他にもカーボン製サドルレールやフォークコラムとステムやハンドルの各接触部、そしてカーボンフォークやフレームリア部にブレーキキャリパーを取り付ける際にギザワッシャー無しでいきたいとき等、接触して締め付ける素材の両方あるいはいずれかがカーボン製になっている部分については全て対称と出来る為、S3の組み付けにおいてもそれら全般で使用している。
以上の処理によって組み付けたSP15とはじめとしたS3各部分については、今のところズリ落ち他の不具合は発生しておらず、締付けトルクに関しても規定よりも少し余裕がある程度で十分固定できている。 また、SP15に限らず何らかのカーボンパーツを使用している方においては、今回取り上げた工具及びケミカルについて、その作業効率と組み付け結果向上の為に検討の選択肢に入れてみることをオススメする。
Meanings of Title and More…
今回のタイトルはアメリカンロックの雄、エアロスミスが1993年にリリースしたアルバム、「Get A Grip」から。 取り上げたネタにシートポストの固定ネタが有った為についカッとなって引っ掛けたものだが、同様にSP15及びS3がエアロパーツ/ロードであり、それを組み付けるという部分(Aerosmith=エアロ職人・鍛冶屋)にも引っ掛けたダブルミーニング……後悔はしてない……
……それはそれとして、アルバム自体はEaglesのDon HenleyやLenny Kravitz、当時のDamn Yankeesから二人、Night Ranger時代は「お前ちゃんとベース弾いとるんか」ライブアクションでお馴染みJack Bladesと、StyxのTommy Shaw等、結構豪華なゲストも交えつつ、良い意味で本当に頭空っぽで聞けて良いなぁと思っている好きなアルバムの一つなのだが、当時Playstation向けに、ピックコントローラ「V-Pick」が付いた、今で言う「エアギター(実際にはエアーピッキングというべきか)」ゲーム、「Quest for Fame」というタイトルがあり、このアルバムの曲が大々的にフィーチャーされていたこともあって、自身にとってはゲームのサントラアルバムとしての認識もあったりで、当時の仕事や音楽がらみの友人と結構遊んでたりとか言い出すと、最早脱線もいいところなのでこの辺りで。
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