Cervelo S3には、QuarqのELSA Rを導入したのだが、組み合わせるつもりだった手持ちのRotor Q-Ringsがつかないことが判明した。……ならばと、楕円勢が幅を利かせるチェーンリングパーツ市場の中で、正円タイプのPraxisworks Road Chainringsをセレクトした。
敢えて王道の正円、ただしニッチ
前述の通り、手持ちのQ-Ringsがつかないことが判った為、んじゃ付きそうなRIDEAにするかとも一旦考えたが、海外の大手自転車関連サイトでちょくちょく話が出てくることから興味を持っていた、Praxisworksのチェーンリングに気持ちが止まった。
Praxisworksと言えば、このサイトのコンテンツとしては結構な幅を効かせているBB関連の記事においても、BB30における音鳴り解消24mmコンバータの決定版的に取り上げているメーカーだが、実はシマノと並んで冷間鍛造技術にも定評があり、ロード・シクロクロス・MTB向けに同技術を採用したクランクやチェーンリングを発売している。また、現在はLOOKのZED2クランク用のチェーンリングも手がけている。
現在のロードバイク向けチェーンリングのリプレース品マーケットにおいては、Rotor/RIDEA/Stronglight-O,Symetric等の楕円(非真円)リングが筆頭で、その他は体力や乗りやすさを重視して少ない歯数にしたものや、シルバー系の仕上げやメッキ・エングレーブの施された装飾性の高いモデル等、何かの要素で純正品とは違う方向性を向いているものが主流だと言える。 これについては、コンポーネントメーカー純正、特にShimanoの現行チェーンリングの変速性能(もちろんメーカー推奨のチェーンやディレイラーとの組み合わせ前提での設計というのも大きい)がずば抜けて良いというのもあって、正円かつ歯数が同じで、仕上げのこだわりも特にないという条件においては、わざわざ純正品から交換する根拠に乏しいのは確かで、それ故にマーケット参入するメーカーも少ないのはしょうがないことではある。
が、3大コンポーネントメーカーの11s向けクランクがほぼ4アーム化された一方で、普及グレードや10sモデル、そして他メーカーのクランクおよびクランク周りでの一体型販売になっているパワーメーターにおいては、5アームモデルも多く混在していて、これらに対応出来る正円リングに対するニーズはニッチながら存在する訳で、そうした中で11s対応と言うと、RotorやStronglightの正円タイプの他、Suginoあたりになるのではないかと思うが、ココに食い込んでくるのがPraxisworksということになる。
ELSAでの記事でも述べた様に、元々はQ-Ringsを組み合わせる予定だったことを考えれば、ELSAでもイケそうなRIDEAにするかとも考えたのだが、パワーメーターとの組み合わせ上、同条件での正円リングのベンチマークがあったほうが良いかなというのがあったのと、非真円系はこれまでにもそこそこ使ってきているし、後でも良いかという結論に達した為、Shimanoと肩を並べる冷間鍛造であること、複数の海外自転車関連情報サイトでの評判の良さ、見た目的にもELSAやS3と合わせやすそうだったことなどの理由からこれにした。
購入については、国内代理店であるトライスポーツの価格設定がものすごく頑張っていることもあり、国内で。漢ギアを踏めないヘタレなので、今回はBCD110の52/36Tにしたが、国内定価ではセットで税込み18,360円。 FC-6800用のチェーンリングよりは高いが、FC-9000用のそれよりは安いというところ。実際にはもう少し安く入手出来たし、米国内での価格が170ドルであることを考慮すれば、価格差など無いどころか寧ろ割安な訳で、トライスポーツの意気込みが伝わってくる。素晴らしい。 なお、トライスポーツ取り扱いの商品説明ページは以下のリンクから。
http://www.trisports.jp/?q=brand/node/6838
Road BCD110 “MID COMPACT” 52/36T
チェーンリングのパッケージングについては、よくある台紙にチェーンリングが止められた上で袋詰めされたもので、”Unboxing”と呼ぶほどの儀式性はないし、Praxisworksの本拠地であるカリフォルニア州旗のクマがいたような気もするが、ことさらレアという訳でもないので割愛。写真については開封後のものからだが、アウター及びインナーの裏表順にまず4枚。
まず、アウターリング表側、52T。仕上げは、場所(左側あたりで内周向きに白っぽく見えている場所はツルツル、それ以外は梨地)によって表面処理を変えた”2 Tone” Black(本国サイトでは2トーンではないものや限定と思しき他カラーも存在する)で、メーカーロゴの他にこのチェーンリングのセールスポイントである冷間鍛造技術(”Cold Forged Manufactured”)と変速性能向上技術(”Leva Time”)を示す表記があるが、最近の派手なデザインやデカイロゴに見慣れていると抑制の効いた渋目の仕上がり。ちょっと意地悪く言うと地味ではあるが、個人的には良い塩梅。 また、見ての通りスパイダーとの接合部近辺は必要最小限にシェイプされており、ELSAとの組み合わせは全く問題ない。
アウターリング裏側。シングルではないチェーンリングにとって、勝負どころの一つとなる変速性能をかなり左右する部分。 見ての通り結構豆に肉抜きっていうか仕上げてある。(圧力的に) 写真で3時の位置にあるクランクアーム側へのものを除くと変速ピンは4つあり、チェーンのせり上がりをサポートする形状の要所に配置されていることが判る。これらと各歯の形状変化と合わせたこの変速システムを、表面での表記にあった様にPraxisworksでは”Leva Time”と名づけ、冷間鍛造であることと併せたウリにしている。
インナーリングのアウターと向き合う側、36T。平面上でのぱっと見には、特に特徴的なところはない。
インナーのフレーム側に向き合う面。こっそりロゴタイプがあるのと、写真の9〜10時の位置にクランクアームをあわせる為のマーキングがある。
ELSAとのマッチング
以上の2枚を、Quarq ELSA Rに組み付けた状態での見た目が以下の様な感じ。
他記事での使用パーツリストにも記述しているが、チェーンリングボルトはTokenのアルミ製ALK083を使用している。チェーンリングボルトを差し色にするかどうかは好みがあると思うが、チェーンリングとQuarq ELSA Rのデザイン上での相性は良いのではないだろうか。
国内メディアを始めとして、クランク周りの写真を撮る場合にシートチューブの延長線上にクランクアームを持ってくるスタイルは多いが、この2商品を見る限り、チェーンステーからの延長線上に持ってくるのが正解ですと言わんばかりのロゴ表示になっているのが面白い。確かに海外では、この位置や水平といった横気味にクランクアームを持ってくる写真を結構見かけるが、ロゴの付き方で判断すると、これで良いんだなと変なところでも感心。
その他の関連要素として、ペダルはSpeedplayのZero Stainlessだが、ノーマルの53mmではなくチタンモデルと同じ50mm。左右トータルで6mmペダル間隔が詰まる計算となり気に入っている。 チェーンはDura-Ace CN-HG900-11で、FDはCampagnolo Chorus(11系型番)なので、前述の変速性能向上テクノロジーであるLeva Timeの推奨環境ではないことから、この組み合わせでの変速動作は良くも悪くも全然参考にならないと思われるが、カンパFDお約束の解除状態から3クリックでアウターに上がる動作はきっちり出来ているし、インナーへのシフトダウンについても、チェーンキャッチャーを付けてはいるが、落ちそうな感じもなくスムーズに変速完了する為、今のところ特に不満はない。
何だコレ?な組み合わせ
とは言え、クランクとチェーンリングがこうなったことにより、BBInfiniteのBBモジュールも含めたBBとクランク、ペダル周り、……S3自体がそもそもそうだが、全て北米メーカー製で固められることとなった。 ここだけ聞くと統一感が出ている気もするが、全体像として見た場合には、人に自分の使ってるコンポーネントを説明するのが非常に面倒くさい組み合わせである。 昨今シマニョーロだけなら別に珍しくもなんともないが、このS3、もはや「ス」マニョーロも軽く飛び越えたパーツ構成になっている為、いわゆる玉石混交とか魑魅魍魎とか意味がわからない世界に突入している。 とは言え、普通に使えるし、本人も満足しているので良いのだが、この辺りの話はいずれ別記事にてまとめる予定。
クランク周りのディティール
こちらはNDSの方からちらりと見える、裏側ショット。写真に見える様にチェーンリングの取り付けは、マーキングされている部分が揃って見える位置にクランクアームが来るようにする。また、クランクアームの裏側には、見たものを混乱に陥れる”Powered by SRAM”の文字や、ペダル軸にクランク長の表示があることが判る。また、クランクアーム側面には、REDと同じExogram(中空カーボン)クランクアームであることを示すロゴが見えている。
続いて、チェーンを外した状態で各チェーンリングの歯の付き方を前方から見たところ。各歯先の処理は前述した様にかなり細かい加工がされているが、全体の傾向として、互いに向かい合う側(つまりチェーンが移動してくる側)が垂直に近くなっており、逆に反対側(チェーンが移動してはいけない側)に角度が付いていて、アウターとインナーリングそれぞれが、チェーンの受け入れと離脱をする方向にオフセットされているのが判ると思う。
その他、事前に仕入れた情報として、チェーンの外側離脱によるクランクアーム間への噛み込みを防止するピンがやや長めになっている為、組み合わせるクランクによっては干渉する可能性があるとのことであったが、Quarq ELSA Rでは問題なかった。万が一干渉した場合は、ピンを削って対処することになる。
重量(アバウトな計算付き)
さてお約束の重量計測。バラの段階で量るのを忘れていた為、次回分解整備時までお預けとか言ってるとまた忘れるので、組み上がった状態のクランクアーム重量を計測。 写真の933gには、CR2032電池装着済みのQuarq ELSA RにBBRight使用時に組み合わせるスペーサー一式分と、チェーンリング、チェーンリングボルト、ペダルを全てつけた状態のもの。 ここから、ELSAの記事で掲載していた分の566g-未使用スペーサー分11gの555gを引いて残るのが378g。更にTokenのALK083が1ペア2gなので、5アーム分で計10g引いて368gとなり、最後にSpeedplay Zeroが208gで残った160gがチェーンリングセットの重量ということになる。 面倒くさい計算で恐縮だが、他参考数値として、一般的な量り方としてのペダル抜き重量は725gということになる。実際にはグリス分やらの誤差もあるので参考値ではあるが、まぁこんなところで。
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